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遺品整理は切なくも楽しいもの

私の4人の祖父母の中で最も長生きしたのは10年前に95歳で亡くなった母方の祖母でした。

祖母は神戸の生まれで、大金持ちのお嬢様として育ち、明治生まれの女性にしては珍しく四年制大学を卒業していました。


そんな何不自由のない暮らしをしていた祖母でしたが、長年臥せっていた母親の看病をするうちに婚期を逃してしまい、結局祖父と結婚したのは40歳になってからでした。



しかし、祖父は祖母よりも一回りも年下の男性で、酷い浮気性だったのです。

それに耐えられず、祖母はまだ幼かった母たち3人の娘を連れて家を出、生まれて初めて貧しい生活を強いられるようになったのです。
そんな祖母にとって、生きる支えだったのですが、お嬢様時代に高名な日本画の大家の下で弟子兼モデルとして絵の勉強をしたことでした。

祖母はずっと絵筆を捨てることなく、亡くなる直前まで絵を描いていました。
祖母が亡くなって、母たち姉妹と唯一の孫である私は遺品整理を行いました。

するとそこには、幼稚園の先生をして3人の娘を育てていた頃の園児の絵や、知人からの手紙、母たちがプレゼントした洋服などが大量に出て来ました。

それらの品を見ていると、祖母が亡くなったということがまだ信じられず、思わず切ない気持ちになりながら、私たちは遺品整理の作業を進めて行きました。


絵を愛した祖母でしたから、なんと言っても遺品整理の主な対象は彼女の作品たちでした。私はその中から、私が好きだと言ったら描いてくれた紫陽花の絵を遺品として貰いました。
母たちも、それぞれ自分の好きな絵を選び、遺品整理はなんとか無事に終わりました。



遺品整理というのは、死者を思い出してしまって切ないですが、その分、その人が生きていた頃のことなどを思い出して語り合ったり出来る、楽しい場でもありました。